2009年8月22日土曜日

父が子に語る昔話しその2

父親がはだか兎という童話の続きを話しました。

「そこでいろいろと考えたすえ、悪いとは知りながら、海にすんでいるワニを騙すことにしました。
さっそく海岸に出かけて行って、遊んでいる沢山のワニ達にむかって、『ヤアヤア、ワニ君たちとわたしたちと、どちらが大勢の仲間をもっているか、一つ調べてみようじゃないか』
 と話かけました。するとワニたちは本気になって
 『ウン、それは面白い。いくらお前達がき気張っても、とてもオレたちワニ仲間にはかなわないよ。これからくらべっこしてみよう』
 といいだしました。
 『よしッ、じゃ~ここから向こうの気多の岬までならんでごらん。わたしがその上を渡りながら教えてみるから』
 正直なワニたちは、すっかり私の言う通りになって、仲間をよび集めて、沖から因幡まで、背中をならべて道を作ってくれました。
 私はワニの背中の上を、『ヒイ、フウ、ミイ、ヨウ』とかぞえながら、ピョンピョンととびわたってゆきました。
 さあ、いよいよ向う岸につくという時です。バカな私はつい、いい気になって、
 『ヤ~イお前さんたち、オレに騙されたな~。お前さんたちは、オレの飛石がわりになったんだぞ~』
 とさけんでしまったのです。
 さあ大変です。ワニたちの怒ったこと、怒ったこと。岸にとび上がろうとした私を、海の中へ引きずり込むと、仲間みんながよって、たかって、さんざん私をぶったたいた上、とうとう大事な毛皮を、すっかり引っぱいでしまいました。
 もともと私が悪いのですから、誰を恨むこともありません。
 しかたなく、ここでこうして泣いていましたら、さっきここを通りがかられた大勢の神様が、潮水を浴びて、風に当たっていれば良いと教えて下さったものですから、その通りにしたら、よくなるどころか、肌がさけて血だらけになってしまいました。」
兎はそういって、「あ~痛い、あ~痛い」とまた、泣きだしました。
 赤裸になって、痛い痛いと泣き叫んでいる兎をご覧になって、優しいお心の大国主命は、大変かわいそうにお思いになりました。
 「そりゃ~気の毒だったなァ。よし、わしが助けてやるよ。
 さァ、すぐに川へ飛びこんで、体についた潮を洗い落しておいで。
 それから蒲の穂先を一杯つみ集めてきて、その上をころがれ。
 ぬれた体に満遍なくくっついて、たちまち元の、真白な毛皮になるよ」
 命はそう教えておやりになりました。
 兎はさっそく、命に教えられたとおりにしましたら、なんと命がおっしゃったとおりに、体の痛みが、ピタッと止ったばかりでなく、いつの間にか元通りの、真白な毛に包まれているではありませんか!
 「ワァー、ワァー、うれしい、うれしい」
 白うさぎはあんまり嬉しくて、嬉涙が一杯でてきました。
 「命様ありがとうございます。お陰さまで、こんなに早く、元通りの姿になれました。
 あの八十神様たちは、どんなにおめかしをしても、ぜったいに八上姫には好かれないでしょう。
 あなた様はそんなに、みすぼらしいお姿ですが、きっと、八上姫様がお妃様におなりになられましょう」
 そういって、白うさぎは何遍も、なんべんもお礼をいいながら、ピョンピョンと山の方へ、とんで行きました。
 八十神たちは八上姫のところへ出かけて行って、一人一人に一所懸命に、
 「どうかわたしのお妃になってください」
 とお願いしました。けれども八上姫は、誰にも、「ハイ、なります」と、いいませんでした。
 そうして白兎がいったとおりに、一番みすぼらしい格好をしていた大国主命に、
 「あなたのお妃になります」
 と、お返事をなさったので、八十神たちは忌々しくて堪りません。
 しかたなく八十神たちは、弟の大国主命をせきたてて、ほうきの国の手間の山というところまで来ました。
 ここはひるまでも、うすぐらく感じるほどの深い山です。